レジ袋有料化とプラスチック問題

プラスチック減量につながるのか

7月1日に始まったレジ袋の有料化は、消費者の環境問題への気付きとなりプラスチックの適正な扱いを促し、廃棄物の減量を進めることを目的としています。スーパーマーケット、コンビニストア、小売店では「有料のレジ袋はいりますか?」と聞かれるようになり、以前に比べてマイバッグを携帯する買い物客が増えたことは前進といえます。しかしレジ袋はプラスチック問題全体の氷山の一角、プラスチック廃棄物の減量という難題解決につながるか疑問視する意見も存在します。

分かりにくいレジ袋の有料化

 

レジ袋有料化を伝えるポスター(写真)は、レジ袋削減への協力の呼びかけ、7月1日の有料化開始告知と3種類の有料化されないレジ袋を次のように紹介しています。

1.厚手(5マイクロメートル以上):繰り返し使えるので過剰な使用を抑制

2.海洋生分解性プラスチック配合率100%:微生物によって分解されるため海洋プラスチックゴミ汚染問題対策に寄与

3.バイオマス素材配合率25%:植物由来が二酸化炭素総量を変えない素材であり温暖化対策に寄与

と、あります。けれども3種類のプラスチックバッグが環境に寄与する理由には少なからず無理があります。

厚手プラスチックは回収されなければ、いずれ厄介な廃棄物となり環境汚染につながります。
海洋生分解性プラスチックは3Rを進めることを原則としつつも図らずも海洋流失する廃棄物への対応として化学技術的イノベーションによる解決を目指しています。しかし、気がかりなことは海洋生分解性を理由に安易な利用の増加、不法投棄、偽物が出回る可能性です(製紙メーカーが100%再生紙と偽っていた事件がありました)。また廃棄されてから微生物によって完全に分解される間に大量プラスチックが洋上を漂うさまも想像できます。
そしてバイオマス素材(25%以上)の場合は1枚のおよそ4分の3を占めるバイオマス以外の素材が果たして温暖化防止に寄与するでしょうか。

これら3種類を例外扱いするのはレジ袋有料化の目的を損ない混乱の元、消費者の意識改革を妨げかねません。

レジ袋有料化の背景

安価で便利なプラスチック製品は私たちの生活に深く浸透しています。問題は役目を終えたプラスチックが分解されない厄介な廃棄物に変身することです。容器包装リサイクル法(容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律1995年施行・容リ法)により、ペットボトルや包装用プラスチックなど一部のプラスチックは、回収・再生されています。しかし、回収ルートに乗らない大量のプラスチックがポイ捨てや不法投棄で適正に処理されてきませんでした。

路上、公園、河川で野ざらしにされたプラスチックは様ざまなルートを辿り劣化して海洋マイクロプラスチック(5㎜以下)になります。(本ホームページ2019年10月25日付トピック「プラスティックの海洋汚染が深刻! 「アルバトロス」の上映を観て」で報告)問題は、プラスチックが既に海水に含まれている有毒物質(PCBなど)を吸着することです。それらを魚介や海鳥が餌と誤って食べ、食の連鎖の中で毒性が濃縮されて生態系に悪影響を及ぼします。

問題はマイクロプラスチックの海洋汚染だけでもありません。プラスチック廃棄物を先進諸国から輸入した東南アジア諸国では適正に処理されず不法投棄されて自然環境を汚染しています、テレビが報じる野ざらしプラスチックを餌と誤って食べる動物の姿に衝撃を受けずにはいられません。

レジ袋よりもペットボトルの方が深刻だという意見もあります。ヨーロッパでは20年も前からリユース(再利用可能)ペットボトルを作っていたのに日本ではサイズ、形の異なるワンウェイばかり出回ってきました。このことは、日本のメーカ―が環境配慮よりも利便性、経済性を重視してきたこと、そしてワンウェイペットボトルを危惧する声よりも便利と考える消費者の数が上回ったということです。プラスチック製品は他にも家庭用品、電気器具、人工芝、公園遊具……と身の回りで幅広く使われています。

フリースなどから出る繊維状のプラスチック

身の回りで使用されているプラスチック製品がこのようなマイクロプラスチックに

プラスチックにまつわるジレンマ

プラスチック製品は災害などの緊急時には簡易トイレ、調理器具、食器、貯水とさまざまな用途で大活躍します。今般のコロナ禍においても医療現場で必要不可欠な素材です。ほかにも店舗の間仕切り、不織布マスクなど感染予防の必需品、テイクアウト・宅配料理の容器として大量に使用されています。
要するに使い捨てプラスチックは、便利である反面、解決すべき課題が多い厄介な存在なのです。その上、回収されても可燃物として焼却されても真の解決にはなりません。

そこで中野ネットはプラスチックの扱いを次のように分けてみました。

1.必要:医療現場、災害時の緊急時の必需品
2.便利:便利さに負けないで、3Rに基づき使用を減らす努力をする
3.使用後のプラスチック廃棄物は必ず容リ法に即して適切な回収ルートに乗せる。
4.ポイ捨て、不法投棄を改めて、プラスチックを野ざらしにしない

プラスチックの特性を生かし「必要不可欠」な場面での使用は受け入れざるを得ません。他方、「便利さ」に負けず、できるだけ代替品に切り替える。レジ袋に替えてマイバッグを持参する、プラスチックストローをやめて紙製をつかうなどできることから実践する心がけを大切にしていきたいです。

海洋生分解性プラスチックの実用化、バイオマス製品の普及に期待しつつもテクノロジーにのみ頼るのではなく、3R推進による発生抑制、廃棄物の減量を第一義として行動することを中野ネットは提案します。

区内にはプラスチックストロー廃止に賛同しているカフェもあります

こんなストローもあります。ストローを洗う小さなブラシ付き