第6次エネルギー基本計画(案)へのパブリックコメント

9月3日〜10月4日まで、国の「第6次エネルギー基本計画(案)」へのパブリックコメント手続きがおこなれていました。
中野・生活者ネットワークとしても意見を提出しましたので、以下に公開します。

 

 

 

 

 

 

 

エネルギー基本計画(案) へのパブリックコメント

中野・生活者ネットワーク

全体を通しての意見

  • 火力発電は、特に効率の悪いものから順に速やかに使用を停止する
  • 原子力発電は、福島のみならず自然環境および人為的観点からもトータルで見れば安全性、効率性は決して高くない
  • 再生可能エネルギーの推進に期待する。ただし立地、規模、設備の老朽化・リサイクルに際して十分な検討を要する
  • 技術開発には先端的科学技術に頼らざるをえない、技術者の自然・環境への理解と倫理観の育成の場の提供を
  • 「国民各層とのコミュニケーションの充実」の実践を望みます

 

各項目への意見と理由は以下の通りです。

1.東京電力福島第一原子力発電所事故後10年の歩み
(2)今後の福島復興への取組(p9)

意見:ALPS処理水の環境放出をやめる(p9 283-294)

理由:(2)今後の福島復興への取組ALPS処理水環境放出の最大の課題は「風評対策」ではなく、「風評被害」が起こりうるALPS処理水を環境放出することです。説明には「トリチウムの分離などについて、新しい技術動向を注視し、現実的に実用可能な技術があれば、積極的取り入れていく」(294)とあることから、現時点では十分に安全な技術は確立されていないと受け止められるので、処理水の環境放出はやめるべきと考えます。

 

(2) 今後の福島復興への取組(p10 307-311P9)

意見:地域の未来像は地域の人びとが中心となって描き、地域企業を中心に自立・再建をめざす

理由: 性急に再生を目指し原発関連企業や首都圏などの地域外企業の参入によるお仕着せの(復興)装置をつくっても地に足の着いた再生になりません。地域に根を下ろそうとしている人びとの自立をうながすことで活力ある持続可能な地域社会の再生になると考えます。

 

2.第五次エネルギー基本計画策定時からの情勢の変化(p11 325-431)
(1) 脱炭素化に向けた世界的潮流(P11)
④「経済と環境の好循環」を生み出すためのグリーン成長戦略(426―431)

意見:カーボンニュートラルの実現に原子力利用を除外する

理由: 「エネルギー政策は我が国の成長戦略に直結する」とあるが、成長の高い目標とはどのように設定しているのか。これまでの問題は青天井の成長を目指した結果、危険な原子力発電、温室効果ガスを排出する火力発電に頼って大量のエネルギーを生産・消費してきたことではないですか。社会全体の省エネルギーを推進し、クリーンなエネルギーで賄える範囲の成長目標を設定することでカーボンニュートラルは可能であると考えます。

 

(2)気候変動問題以外のエネルギーに関係する情勢変化(p14 432-533)
②新型コロナウイルス感染症拡大の教訓(463-479)

意見:コロナ禍の緊急事態宣言下の教訓を生かし、国も企業も国民も新しい日常を目指す

理由: 第1回緊急事態宣言では、国民は困難な生活を余儀なくした一方で、通勤通学時間と混雑から解放、都市の過密状態への気づき、経済活動・交通量減少による大気浄化を経験した。これまでのように経済性に特化した成長目標を掲げるのではなく、クリーンな環境を取り戻し、経済性と環境保全とのバランスの取れた目標をたてることで、新しい日常と矛盾しない新しい社会の形成が可能と考えます。

 

3.エネルギー政策の基本的視点(S+3E)の確認 (p17 534-613)
(3)気候変動や周辺環境との調和など環境適合性の確保(p18 578-592)

意見:気候変動・気候危機の原因としての自然環境の喪失を踏まえてカーボンニュートラルを進める

理由: 気候変動、気候危機(自然災害頻発)の原因は、人類の活動すなわち、化石燃料への過度の依存と自然環境の破壊喪失にあります。エネルギー基本計画においても技術的な脱炭素と安定したエネルギー供給に特化するのではなく、脱炭素社会構築の前提には自然環境の修復・土地利用の在り方、都市の巨大化の見直しが重要とする姿勢をしめす必要があります。

 

4.2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応(p19―)
(3)電力部門に求められる取組(p23-721-818)
①再生可能エネルギーにおける対応

意見:再生可能エネルギーは地産地消・小規模を基本とする

理由: 消費地から遠い発電施設は送電ロスが生じます。再生可能エネルギーでは原発施設から大都市の消費地までつづくような大規模送電網を利用した送電システムの見直しが必要です。風力発電、太陽光パネルの立地において自然地の破壊、農地転用による耕作面積の縮小が目立ちます。再生可能エネルギーの利用には新しい思想、すなわち原子力による大量発電とは異なる電力の小規模地産地消が相応しいと考えます。営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング:農作物の上でソーラー発電)に注目を集めていますが、規模、消費地との距離、土壌・作物・渡り鳥など田畑で生息する鳥類への影響が懸念されています。

 

②原子力における対応(p24 756―768)

意見:原子力発電の社会的信頼回復ない

理由: 「東京電力福島第一原子力発電所事故の原点に立ち返った責任感ある真摯な姿勢や取組こそ重要であり、これが我が国における原子力の社会的信頼の獲得の鍵となる」(768‐769)とありますが、東京電力が福島第一原子力発電所事故で失った原発への不信は修復不可能です。また原子力発電事故は一度問題が生じると危険であることを明らかにしています。地域住民との合意形成が不十分であるにも関わらずALPS処理水の環境放出を行おうとしていることに「責任感のある真摯な姿勢」を感じることはできません。

 

5.2050年を見据えた2030年に向けた政策対応
(1)現時点での技術を前提としたそれぞれのエネルギー源の位置づけ(p32 991-1197
②原子力(p34 1096-1105)

意見:原子力発電をベースロード電力と位置付けることをやめる

理由:福島第一発電所事故で原子力発電に問題が生じると火力発電で補い、火力発電により二酸化炭素排出量の問題が起きると原子力発電の利点を強調することに矛盾を感じます。原子力も火力も地球と人類の持続可能性を危うくしています。