介護体験をシェアします

誰でもがケアをする側にも必要とする側になる可能性があります。我が家の介護体験もどなたかの参考になると考えて最近の疥癬感染の経緯をシェアします。

自宅で同居する夫の母は95歳、要介護3、ケアが必要になって12年目になります。ケア・マネージャーのアレンジで訪問医療・看護・リハビリによる健康管理とデイサービスとショートステイの複数の介護サービスを利用しています。家族(夫と私)が社会生活を営めるのは介護支援のおかげです。とはいえ、いったんことが起こると日常生活の歯車がかみ合わなくなります。我が家は2月ごろから6月にかけて「疥癬」という皮膚の感染病で右往左往しました。

診断が難しい疥癬、疥癬が見つかるまで……

「疥癬」はヒゼンダニ(疥癬虫)という非常に小さいダニが人の皮膚に寄生しておこるかゆみを伴う皮膚の病気です。高齢者施設などで多く報告されていますが、学校でも注意すべき感染症のひとつとして紹介されています(下記インターネットを参照してください)。

皮膚科でいただいた疥癬の冊子。詳細はインターネットで閲覧可能です

疥癬チェックシート

疥癬には、感染力の弱い(長時間接触することでおこる)通常疥癬と感染力の非常に強い(隔離、消毒、殺虫を必要とする)角化型疥癬の2種類あります。疥癬は潜伏期間が1か月2か月と長く、皮膚を観察してダニを探すため診断が大変難しい病気です。症状については「疥癬チェックシート」が参考になります(下記インターネットで検索できます)。

母が疥癬であるとわかるまでに時間がかかりました。というのも母は一昨年夏ごろに帯状疱疹にかかり、回復後も断続的に様々な湿疹に悩まされてきたからです。新しい種類の湿疹が現れるたびに異なる軟膏と飲み薬を試み、あるいは薬疹の疑いもあり手探りの治療が続きました。

母は今年になって再び強いかゆみを訴えて「ボリボリ」と音が聞こえるほど身体を掻くようになり、2月ころからは他の家族も強いかゆみを感じるようになり、4月初旬に3人で皮膚科を受診しました。診察は皮膚を観察してヒゼンダニが居そうなところの皮膚片をハサミで切り取り(とても痛いです)溶剤に溶かして顕微鏡で特定します。はじめは、ダニが見つからず、それぞれに乾燥肌、アレルギーなどの異なる症状に合わせて薬を処方されました。しかし、夜中に目が覚めてしまうほどのかゆみが続きました。疥癬にほかの目的の軟膏をつけると悪化してしまうそうです。

疥癬の治療

5月中旬になってようやくヒゼンダニが見つかり通常疥癬との診断がくだりました。

通常疥癬の治療法は、
ストロメクトール錠を週1錠2回服用し、オイラックス軟膏を身体全体に塗布しました。
母は治療開始2週目に手の指の間2か所に角化がみつかり、角化型疥癬の治療に切り替わりました。まず、自宅で隔離状態となり、皮膚科医からケア・マネージャーを通して医療関係と介護施設へ報告されました。自宅では、居室で食事をとる、ダニの殺虫剤の噴霧、掃除、衣類と寝具の洗濯(毎日50度の温水で殺菌)を実践しました。

角化型疥癬の治療法は、
スミスリン(乳液状の薬剤)週1回(全身に塗布し12時間以上おいた後に洗い流す)を2回繰り返しました。その後もオイラックスを塗布しながら自宅療養が一月続きました。
母は6月下旬に外出が解禁となりデイサービス通いを再開、7月中旬診察で「治療終了」となりました。

感染症を経験して

疥癬は感染予防が難しく気付かない間に感染したり感染させたりする可能性があります。かゆみはあるものの体力はあるので外出できますが、自らを隔離することは患者の社会的責任と感じました。しかし社会からの隔離状態は取り残されているような気持にもなります。自宅療養中に感染予防対策をとって訪問医療と看護・リハビリを頻繁にしていただきとても心強かったです。

感染の経験から今気を付けていることは、石鹼で手洗いすることです(食事、排せつ、他者とのかかわりで手に触れることが多くあります)。室内やトイレの清掃も大切です(ダニの死骸やフン、角化してはがれた皮膚(垢・フケ)によっても感染したりかぶれたりします)。

皮膚疾患の予防

疥癬以外の皮膚疾患(乾燥肌)の予防について皮膚科の先生から示唆をえました。頻繁な入浴は乾燥肌の原因になります(湯船につかるのは1日置き程度に、身体をタオルなどでごしごしこすらず、石鹸を泡立てて泡だけで軽く洗います)。極端に清潔を突き詰めると皮膚の健康状態が損なわれてしまうようです。しかし、メディア、コマーシャルが体臭、加齢臭を問題視することで、私たちは過度な悪臭対策が求められているようです。香水やデオドラント、洗濯用の洗剤や柔軟剤の人工的な「かおり」(香害の原因)が強くなったことなども関係しているのでしょう。

今回の経験を通して感染症の自宅療養の困難さを実感しました。コロナであったら患者の辛さも治療に当たっている方々のご苦労もいかばかりでしょう。いずれの病気にも感染予防に、今できる対策を実践していきたいです。(加藤まさみ)

 

 

疥癬(かいせん) | 皮膚科学関連医療薬品のマルホ (scabies.jp)
疥癬(かいせん) – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会) (dermatol.or.jp)<4D6963726F736F667420576F7264202D2032343132313481798DC58F49817A8A778D5A8AB490F58FC7837D836A83858341838B88C42E646F6378> (yamaguchi-u.ac.jp)

学校において予防すべき感染症の解説 (gakkohoken.jp)