凄い!! ごみ中間処理施設を市役所の隣に建設〜「武蔵野クリーンセンター」と「むさしのエコreゾート」を見学

中野ネット有志で12月21日(月)、武蔵野市の「むさしのエコreゾート」と「武蔵野クリーンセンター」の二つの施設を見学しました。

市民参加で実現した武蔵野市の廃棄物処理施設

 武蔵野市は、面積約10㎢、人口約14万人、東京23区を除く自治体で蕨市に次ぐ全国第2の人口過密都市です。隣接する自治体が広域でごみ処理する中で、単独で行なっています。旧クリーンセンターは様ざまな困難を乗り越えて1984年に現在のエコreゾートと公園一帯に建設されました。同市は、1955年以降三鷹市にある保健衛生組合の焼却工業で激増するゴミ処理に対応していました。1970年には工場の騒音、悪臭、ばい煙に対して隣接する調布市民から環境改善を厳しく迫られたことから、武蔵野市は市役所に隣接する市営プール地に独自の処理工場を建設することを決めました。迷惑施設の建設は、当初周辺住民から激しい反対運動がおこり、計画作りに市民参加が求められ、やがて市と市民でごみ減量に励むようになったそうです。ゴミ焼却工場が過密都市の中央部に立地したことで当時の話題になりました。

建設から約30年を経て老朽化した旧施設の更新時期を迎え、新しい施設の建設計画は徹底した市民参加により進められました。新施設まちづくり検討委員会(2008年度~2009年度)と新施設・周辺整備協議会(1期2年・4期・2010年度~2017年度)と10年をかけて丁寧な社会的合意形成の成果として新クリーンセンターが2017年に竣工しました。今回、私たちの見学には検討委員会と新施設・周辺整備協議会の座長を勤められた小澤紀美子先生(学芸大名誉教授)、建設・処理施設の設計運営に関わった武蔵野市の担当者の方々から新クリーンセンターの基本的な考え方と旧施設の利活用について伺うことができました。市民参加により未来の資源循環を見据えて新しい「武蔵野市クリーンセンター」と「むさしのエコreゾート」が生まれたことがわかりました。

旧焼却施設をリノベーションした「むさしのエコreゾート」

はじめに見学した「むさしのエコreゾート」では武蔵野市環境部環境政策課・環境啓発施設係の山村さんに案内をしていただきました。エコreゾートは総合環境啓発施設として今年(2020年)10月竣工、11月8日にオープンしたばかりです。エコreゾート誕生までには、旧クリーンセンターを取り壊さずリノベーションすること、そしてオープン後の運営にいたるまで、市民と民間も参加で検討を重ねたそうです。 建物の外観はごみ焼却施設当時の姿を、内部も当時の痕跡をとどめています。プラットホーム(ごみ収集車がごみを降ろすところ)をリノベーションした清潔感のある広い空間は、展示コーナー、ダンボール工作、自由なお絵かきスペースとして使われています。その他ライブラリー、キッチン、学習室などがあります。小学生の社会見学ではクリーンセンターに合わせてエコreゾートで資源の循環や廃棄物の処理について学べるように工夫されています。

エコreゾート外観

ごみ焼却施設当時の姿を生かしてリノベーションされた「むさしのエコreゾート外観」

エコreゾートの内部

内部にも旧施設の痕跡が残されている館内の様子

説明を受ける。

担当の方から施設完成までの経緯や施設の説明をお聞きしました

「みんなが来たくなるような施設に」するための様々なアイデア〜新クリーンセンター

見学の前に新クリーンセンターの概要を、武蔵野市環境部ごみ総合対策課クリーンセンター係・地産地消エネルギー推進担当の神谷さんから伺いました。

新クリーンセンター建設にあたって、環境への配慮はもちろん市庁舎に隣接していることから清掃工場といういわゆる迷惑施設を「みんなが来たくなるような施設」にしようと様ざまなアイデアが生かされていました。例えば、煙突は旧施設のものを改修して使用する。ごみピットを地下にすることで必要な高さ15メートルを確保し、騒音、臭い対策をしています。

ごみ焼却の余熱で発電し、所内や近隣公共施設への電力・蒸気を提供しています。防災用にガス・コジェネの施設も併設、建物の外壁にテラコッタルバー(格子状に配列する素焼き外装材)を使い、壁面緑化によって町並みに溶け込む施設になっています。内装は美術館のようなしつらえ、休憩スペースには建設にあたって伐採した銀杏の木を使用した腰掛があります。屋上には市民と一緒に運営する菜園、太陽光発電も稼働しています。廃棄された果物で作ったお酒を飲み語り合う「ごみピットバー」というイベントも開催されています。(コロナ禍で開催中止、田辺と加藤は5月に参加予定でしたが参加できませんでした。)

熱心にお話をしてくださった神谷さんの肩書が「地産地消エネルギー推進担当」というのもいいですね。

ロビー

美術館のような「武蔵野クリーンセンター」内部

地下にすることで必要な高さ15メートルを確保し、騒音、臭い対策がされているごみピット

屋上菜園

クリーンセンターの屋上菜園

エコreゾートとクリーンセンターは12月現在、コロナ禍で施設の利用が制限されていますが、基本的には小学生の社会見学もあり、いつでもだれでも見学可能な利用者が楽しみながら環境について学ぶことが出来る環境総合啓発施設、市民が誇れるクリーンセンターでした。

クリーンセンターについては武蔵野市ホームページをご参照ください。
http://www.city.musashino.lg.jp/kurashi_guide/gomi_kankyou_eisei/clean_cente

 

中野区との比較〜現「四季の森公園」に焼却施設建設計画があった2000年代初頭

翻って中野区は、面積約15㎢、人口約33万人強と武蔵野市の1.5倍の面積に2倍以上の人口と、日本で1,2位を競う人口過密自治体です。廃棄物の自区内処理が求められていたころ(2000年代初頭)は区内最後の大規模敷地と言われた警察大学校等跡地(現在の四季の森公園)の一角2ヘクタールに焼却施設を建設する仮の案がありました。区の中心、区役所の近くと武蔵野市と似た立地でした。その後自区内処理の原則がなくなり中野区は焼却施設を持たない自治体となり、当時、胸をなでおろした区民も多くいました。結果として焼却施設の煙突の代わりに超高層ビルの並ぶ大規模開発が進みました。

時代が変わり、迷惑施設と言われた焼却施設は、市民の憩いの場、環境教育施設、観光の対象にさえなっています。武蔵野市民がちょっとうらやましく、大規模開発の道を選んだ中野区の選択が良かったのかと改めて問う見学となりました。

見学したMさんの感想は、「今回の建設が成功できたのは専門家として住民の気持ちや思いを受け止め、 また行政の方針も理解できる、小澤先生のようなキーパーソンがおられたからではないかと思いました。」

(中野ネット環境部会 田辺・加藤記)

見学のきっかけは、生活者通信11月号に西園寺みきこ武蔵野市議会議員(武蔵野・生活者ネットワーク)の当施設を紹介する記事を読まれた中野区のYさんから問い合わせをいただいたことでした。中野ネットでも見ておきたいということになり、今回は年末でコロナ禍でもあり少人数の見学になりました。

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