妙正寺川の川歩きと全国一斉水質調査

全国一斉水質調査とは

梅雨入り前の6月7日、全国一斉水質調査を兼ねて妙正寺川の川歩きをしました。

全国一斉水質調査をご存知ですか? 毎年世界環境の日(6月5日)に合わせて日本中の600を超える団体が一斉に河川など水辺の水質調査を行ないます。水質はパックテスト(比色法による簡単な水質分析器具)でCOD(chemical oxygen demand:化学的酸素要求量:水質をきれいにするのに必要な酸素量)を調べます。17回目の今年は、新型コロナウイルス禍で実施が危ぶまれましたが、非常事態宣言解除となりマスク着用・密にならないように気をつけての実施となりました。

中野・生活者ネットワークは妙正寺川中流域を担当

6月7日は西武新宿線沼袋駅南口改札10:00集合、江古田公園12:00解散、参加者は11名で、お子さん3名が参加しました。

わたしたちは妙正寺川中流域の東京都中野水再生センター(下水処理施設)から処理水が放流される地点の上流(千歳橋)から落合公園横(水車上橋)までの4地点(地図と各地点情報を参照)を調査しました。妙正寺川は荒川水系に属し神田川上流(北から妙正寺川と江古田川、善福寺川、神田川)の支流で、流路9.7㎞、流域面積21.4㎢、東京都内を流れる1級河川です。水源は杉並区妙正寺公園内妙正寺池、中野区松が丘で江古田川と合流、新宿区下落合一丁目辰巳橋付近で神田川高田馬場分水路と合流します。

水質調査地点図と中野水再生センター排水口

水質調査は、詳細は省きますが次の流れで行いました

1.はじめにバケツで川の水を汲み上げます(写真1)
2.バケツで汲み上げた川の水の温度を測り、パックテストをします(写真2)
3.すっかりパックテストを覚えて調査を手伝ってくれた小学5年生のM君(写真3)
4.試薬により変化した水の色で化学的酸素要求量を確認します。(数値が高いほど汚れている)(写真4)

写真1、2

写真3、4

調査結果とまとめ

今回の結果、化学的酸素要求量は江古田公園橋で7があった以外は8または8以上でした。過去の調査結果に比べて、水再生センターの処理水排水口よりも上流の千歳橋では数値が上がった(水質が悪くなった)一方で下流の人道橋、江古田公園橋、水車上橋では以前の記録より低い数値でした(文末の「妙正寺川の水質調査データ」参照)。興味深かったのは水再生センターの処理水排水口の上流と下流では水の透明度が異なりますが、化学的酸素要求量が変わらなかったことです。水質調査の結果は「全国水環境マップ」に記載されます。

調査中、うれしかったことは4羽の水鳥(種類は特定できませんでした)がいたことです。水中にもぐって魚らしきものを獲る姿に参加者一同大喜びしました。残念だったことは人道橋の真下に自転車が放棄されていたことです。また、トイレットペーパーと思われる白いゴミが河床のあちこちに付着していました。というのも妙正寺川の流域は合流式下水道網にあるからです。人工的な建物や舗装された地面に降った雨水は雨水桝から下水道に集められ汚水とともに水再生センターに送られます。ところが雨量が下水道管の許容量を越えると大量の下水(汚水を含む雨水)が未処理のまま河川に流れ込みます。

結果として①河川の水質汚濁、②豪雨時の浸水リスクの二つの問題が起こります。妙正寺川が人工的な(河床が深く掘り下げ、河岸が垂直にコンクリートばりで)整備をされてきたのは、降雨時に下水道を介して河道に流れ込む大量の水を下流に素早く送り(流下速度を高め)水害を防ぐためです。東京都は、合流式下水道の課題をふまえて河川の汚濁を低減する様ざまな取り組み(下水管の汚泥を押し流す初期雨量を河川に流さない工夫や合流式下水道幹線の新設)をしています。けれどもこれらの取り組みは河川の水質汚濁は改善していますが、合流式下水道の課題を抜本的に解決できません。今回は川歩きと水質調査で妙正寺川の特徴や課題を参加者と共有しました。天候に恵まれて熱中症を心配するほどの熱さでしたが、無事終了しました。

参加者したお母さんたちの感想

●「初めて水質調査に参加し、自分が住む町の川や水について身近に考えるいい機会でした。川を知ることは町のことやその場所の歴史を知ることでもありました。川にこんなにも生活排水が流れてしまう現実に驚き、今一度、水のこと特に排水することを見直したいと思いました。」(Kさん)

●「自分にとっても子供たちにとっても貴重な経験ができて良かったです。水をバケツでくみ上げる、実験みたいにスポイドや試験紙を使って調べるという体験が子供たちにとって新鮮だったようで、良い経験がさせられたと思います。今度は妙正寺川の終点を見に行ってみたいです。また、水の再生処理場や、ごみの処理場なども今後、見学できたらいいなーと思っています。貴重な経験をさせていただきありがとうございました。」(Sさん)

 

全国一斉水質調査は市民が河川に親しみ水質や水循環に興味をもつ機会になりますし、子どもから大人まで幅広い世代が楽しく交流できる場になることを実感しました。中野ネットは、都市河川と水の循環、河川の水質汚濁と浸水リスクを理解したうえで、都市環境の修復につながる提案や情報提供に努めています。そしてまちづくりは川と親しみ、まちを歩くことから始まります、いずれ神田川流域を踏破しましょう。