~まちの雨のゆくえ、雨とのつきあいかた~ 私たちの生活をうるおす「グリーンインフラ」墨田区を訪ねて

121日(日)NPO法人中野・環境市民の会主催、中野・生活者ネットワーク協力で墨田区のグリーンインフラを学ぶフィールドワークが開催されました。講師はNPO法人雨水市民の会の理事笹川みちるさん、サポートは芝さんでした。(歩きながらのレクチャーでしたが参加者ひとりひとりに墨田区観光協会のイヤホンを用意してくださったので聞き取りやすかったです。今後の参考になりました。)

 初めに墨田区の環境について説明がありました。周囲を川や水路で囲まれていて、海抜がゼロメートル前後の起伏のない土地です。さらに急激な都市化で地面がコンクリートで覆われて雨がしみ込みにくいことから都市型洪水が起こりやすい地域です。その対策として、まちのあちこちで屋根に降る雨水の貯留が始まったそうです。1995年に設立した雨水市民の会は行政と連携して雨水タンクの開発・普及等に取り組んできました。今では801か所の路地尊・天水尊があり、26,000トン強の雨水を貯められるまちになりました。(海抜ゼロメートルの地域ですので、雨水浸透ますが有効ではなかったことも、雨水貯留が進んだと考えられます。)

その中で今回見学した京島地区は、もともと震災・戦災から免れたことから狭い路地に木造密集住宅が並んだ昔の街並みが残る地域でした。火災にも水害に脆弱なことから住民の防災意識が高い土地柄です。

まちづくり公社が中心になり住民と協議しながら、道幅の拡張、コミュニティ住宅(区営住宅)への建て替えを進めてきました。コミュニティ住宅の地下や隣接する空き地に雨水貯留タンク(路地尊)を設置してあります。道端のポンプ(写真:上)からいつでも誰でもが雨水を使えます。いざという時の一時貯留・初期消火や水の確保、普段は緑への水やりなどに使っています。

こぞう一休

まちなかのポケットパークや防災拠点には近隣の家の屋根から雨どいを引いて雨水を貰って貯留しています。ポケットワークの名称はみんなで考えた、桜の木がある所は「さくら一休」、青い小像のオブジェ(写真:上中央)が置いてある所は「こぞう一休」等々でした。公園には青い大きな据え置き型のタンク(写真:上右端)があり、中にはたっぷりの雨水とバケツが入っていていつでも使えるようになっていました。

町会の建物の建て替え時には雨水貯留・利用の工夫がなされていて町会長をはじめとする住民の意識の高さが現れていました。上の写真は町会の建物です。外階段の下に屋根からの雨水を通す太いパイプがあり、トイレの流す水として使われています。

住民と大学と雨水市民の会の共同研究で、雨水を利用したプランターづくり(写真:上)、雨水を活かして緑を育てているカフェ、昔ながらの家を活かした取り組みなどもありました。

 上の写真は、雨水市民の会の提案を取り入れた素敵な雨水共生モデル共同住宅です。建物は下町らしい粋な木造づくりの家屋で、向かって右脇に雨水タンクや左脇にビオトープ、鹿威し、建物前面に雨の道(バイオスウエル:雨水が浸透するように砂利を敷いた)とアイデアが盛り込まれていました。 

 雨水市民の会では、今後はタンクの雨水貯留量の見える化、大雨予報時に事前にタンクの貯留雨水を空にしておくことの啓発もしていく計画です。(防火水槽は満水が望ましい反面、水害対策としてはタンクを空にしなければならないところが悩ましいです。)最後に雨水市民の会の事務所にお邪魔し、(写真:下)貯留タンクの雨水をろ過した水やコーヒーも楽しんできました。 

 さて、今回の墨田区での雨水ワークショップを中野区ではどのように参考にできるでしょうか?墨田区では災いの元の雨水を恵に変える工夫がたくさんありました。中野区の区営住宅でも雨水貯留タンクの設置は出来るのではと思います。またポケットパークで近隣の家から雨樋を引いて雨水を貯め、ガーデニング好きの方がお花や緑を育てるのも良いですね。地形・土地柄は異なりますが、災いを恵に変える流域治水を考えていきたいです。

とても充実した楽しい見学会でした。

                                田辺雪子 加藤まさみ