11月オープンオフィスデイ:「盲導犬と歩けば」:松田誠二さん
11月18日は、中野ネットの区議会議員細野かよこの区政報告に引き続き、11月のオープンオフィスデイを開催しました。ゲストスピーカーは松田誠二さん、盲導犬を選んだ経緯や訓練の様子、日常生活について伺いました。
生い立ちから盲導犬と出会うまで
松田さんは、墨田区の出身です。小学生の頃から視力が徐々に低下して、中学生の頃には自転車で電柱にぶつかるなど日常生活が困難になり、職業訓練校でマッサージを学びました。就職してリラクゼ-ションサロンで10年ほど働く間にサポートをしてもらうほど視力は低下して、中途視覚障がいをもつことになりました。次に企業の福利厚生部門でマッサージの仕事をしましたが、東日本大震災を機にリストラに合いました。
2度目の職業訓練所で伴侶の茜さんと出会い結婚、現在、若宮で2人の男の子と親子4人で暮らしています。(茜さんは昨年9月のオープンオフィスデイ「バリアチェックで住みよいまちに」では話題提供を、翌10月の「中野駅周辺をバリアチェックでまち歩き」では実踏に視覚障がい者の立場から参加されました。今年4月からは中野ネット会員です)
松田さんの職業は広告代理店の福利厚生部門でマッサージ業務に携わっています。通勤は都心の職場まで西武新宿線野方駅から高田馬場と原宿で2回乗り換えて行きます。趣味は買い物、サングラスやヘッドホンにはまって沢山持っています。
白杖を使っていたころは、ものにぶつかることも多く、長男と手をつないで歩いていました。長男の「盲導犬が居れば手をつながなくても歩けるね」という言葉から息子に負担をかけていることを感じたそうです。会社の先輩に相談、検討して盲導犬との共生を決めました。
はじめに、二つの盲導犬育成協会を調べて、練馬区にある協会を選びました。次にまず、区の障がい福祉課から情報を得て、東京都に申し込みます。育成協会の審査では盲導犬との共生が可能か、住まいの広さ、収入、トイレ(風呂場)などの条件を満たしているか問われました。審査通過までに7か月も待ちました。そして約1か月を超える盲導犬との厳しい共生訓練を経験しました。訓練は、初めの2週間は室内で過ごさなければならずとても辛かったそうです。3週目はコンビニに買い物にいくなど日常生活が可能になり、朝夕決められたコースを歩けるようになります。最後は、1.コースを一人で歩く、2.音を頼りに判断しながら知らない道を歩く、という二つのテストをうけました。
盲導犬との共生
昨年2022年12月から共生がはじまり、野方駅から電車を乗り継いで通勤もはじまりました。当初はコロナ禍で電車は比較的空いていましたが、最近は混雑するようになったので大変です。車内での周囲の反応はまちまちです。また、外出するようになってもすべてが順調なわけではなく、初めのうちは何かに触れてエスカレーターに乗れなくなったことがあります。その時は休み時間に会社のエスカレーターで上り下りの訓練をしました。目的地以外の場所に行ってしまったり、ほかの人に反応したりのハプニングもあるそうです。また、指示は英語で出しますが、発音が悪いと聞いてもらえないこともあるそうです。
松田さんは、外出時には、盲導犬に加えて「行先ナビ」機能を持つiPhoneのアプリ「ボイスリスタ」、足に装着した器機が振動で場所情報を伝えるホンダの「アシラセ」(まだ助成金の対象になっていない)など機器を上手に使いこなすことでより安全でスムーズな歩行を確保しているそうです。
駅のホームでは転落事故を防ぐために、盲導犬が線路側を歩きます。行先によっては進行方向と逆側を歩いて乗車場所に行ってから進行方向のホームに向かいます。
現在日本には870頭の盲導犬が活躍しています。以前は1,300頭いたので減少しているそうです。盲導犬共生者のサークルで一緒に旅行に行くこともあります。盲導犬は、食事は1回(太らないように)トイレは4回決めた時間に行くようにしています。盲導犬は、通常7~8年働いて引退したのちは普通の犬の余生を過ごすそうです。
周囲の人たちができること
周囲の人は、盲導犬帯同の人を見かけたら、どうすればよいのでしょうか。お話を伺ってわかったことは、外で出会ったときに松田さんには声をかけてもよいですが、盲導犬は「仕事中」なので声をかけたり触ったりしてはいけません。名前を呼ばれたり、声をかけられたり、触られると喜んで「仕事」を忘れて(跳んだり、なめたり、)普通の犬に戻ってしまうそうです。松田さんに声をかけるときは、盲導犬と反対側からそっと肩にふれて話すとよいそうです。
盲導犬と一緒に入れる飲食店の情報をお寄せください
盲導犬が一緒で困ることは、病院、タクシー、飲食店の利用を断られることです。現在の障がい者差別解消法ではお店への盲導犬同伴は努力義務ですが、盲導犬お断りの飲食店が多いそうです。白杖を使う茜さんは入れても盲導犬と一緒の誠二さんは入れないことになります。狭いとか、込み合うとかお店の事情もあるとは思いますが、中野区内に盲導犬同伴が当たり前のお店が増えるよう働きかけていきたいです。松田さんにご紹介したいので、もし盲導犬OKのおいしいお店をご存知なら中野ネットまでおしらせください。特にラーメン屋さんに入りたいそうです。