高齢者の免許更新を考える

高齢者の交通事故が後を絶ちません。私はふた月ほど前に70歳から74歳の自動車運転免許更新に義務付けられている高齢者講習を受けました。今回は高齢者講習の意義を考える機会になりました。(中野・生活者ネットワーク代表 加藤まさみ)

高齢者講習の案内はがきが届いたら

70歳から74歳の誕生日に運転免許の更新を必要とするドライバーは、警視庁から誕生日の190日前に高齢者講習のお知らせのはがきが届きます。免許証の更新は、警視庁指定の教習所か東京都自動車免許試験場で講習を受けて、高齢者講習受講証明書を受け取ってから通常の更新手続きを行います。

高齢者講習(70歳から74歳までの方の免許更新) 警視庁 (metro.tokyo.jp)

講習は誕生日の6か月前から1か月後以内に受けられますが、混雑するので早めに予約するように注意書きがありました。実際に誕生日の一月前に数か所の教習所に電話すると、予約は埋まっていて希望の日時が取れません。そこで警視庁に電話で相談すると、府中の自動車免許試験場を予約できました。

高齢者講習の様子

講習の内容は、映像を用いた座学、目の検査(視力、視野、明暗転への反応)、実施運転です。
座学では、視力が夕方に見えにくいこと、夜間のドライブが危険なことが強調されていました。目の検査では、視力は矯正できても視野と光への反応は年とともに衰えて矯正できないことがわかりました。実施運転は仮免試験のように講師(試験ではないので)の指示で試験場内をS字カーブ、車庫入れ、踏切発信などをしながら20分ほどドライブしました。(受講前に眼科で視力の確認と「車庫入れ」と「縦列駐車」を練習しておいたので無事に免許更新できました。)

担当講師によると、私の運転技術はチェック項目では満点でしたが、項目外で車線変更を忘れていたそうです。気をつけていてもうっかりするということを心にとめるようにとアドバイスされました。また停止位置が停止線に近すぎると指摘されました。そのむかし、教習所で停止線に合わせて止まる練習をしたと反論しましたが、今は停止線よりも手前で止まらないといけないそうです。

当日、一緒に免許更新をした方々と高齢者講習に関する情報交換をしました。教習所で講習を受けた方の話では、実施運転は試験場に比べて簡易的で、ペーパードライバーでほとんど実施運転しないで高齢者講習終了証明書を受け取れた方がいたそうです。(高齢のペーパードライバーがゴールド免許を持ち続けることには違和感を持ちます)。また、75歳で認知機能検査を受けた方は、「思わぬうっかりミス」で再検査を求められたそうです。

高齢者の自動車事故を回避するために

お話のようすから、私も含めてみなさんが高齢者講習を憂鬱なイベントととらえていることがわかりました。確かに高齢者講習は「老い」を意識させられましたが、客観的にライフステージの変化を自覚する機会ではあります。高齢者の交通事故が後を絶たないことを考えれば、高齢者講習は路上の思わぬ大惨事を招かないための転ばぬ先の杖といえます。

私は府中の試験場で講習を受けたことで、自らの運転技術への不安を解消し、安全運転への心構えを新たにし、いつかは免許証を返納する覚悟を持てました。これから講習を受ける方には、憂鬱でも仮免試験並みの講習を受けることをお勧めしたいです。

2019年4月19日に起きた暴走事故では母子二人死亡、9人が重軽傷を負いました。

慰霊碑は「交通事故ゼロ」へ向かう希望の芽を表しています

この事故を受けて豊島区は2020年に交通安全宣言都市としてすべての交通事故犠牲者を悼み慰霊碑を設置しました