自然の地形を生かした公園づくりを —中野区の一番新しい公園「広町みらい公園」を見学

広域避難場所の核になる公園

子供の遊び場・居場所の検証の一環として、7月29日に公園が少ない区南西部に昨年(2019年9月)オープンした「広町みらい公園」を見学しました。所在地は中野区弥生町6-1の公務員住宅跡地、面積は10,355㎡、神田川へ向かう北斜面と平地からなります。

公園中央部は遊歩道に囲まれた広々とした草地の多目的広場です。災害時に一時避難場所として使用され、東側の区清掃施設との間には災害時用マンホールトイレがあります。

草地を中心に、南西角に体験学習センター(弥生町6-1-7 03-6382-6072)、西面は斜面を利用した滑り台など複合遊具、北側は公園の高台部分と低地の段差を活かした数種類の構造物(北西にすり鉢状の斜面地を活かしたイベント広場と半円型の階段状の観覧席、北側正面には垂直に切り立つ滝流れとイベント広場へつづく水路)があります。

さらに北奥の台地は植栽と遊歩道、楠の大木のあるテラス、ベンチがあります。台地からは東から南にかけて広々とした街並みが望めます。北東奥は台地と低地を結ぶ車いすの通れるスロープがあります。

広町みらい公園は全体に広々と明るくきれいに整った印象を受けました。体験学習センターではさまざまな余暇をたのしむイベントを用意されています。公園の一部(南側道路に沿って)は「ポタジェ」という、区民参加で野菜、ハーブ、草花を育てる手作り感にあふれるコーナーになっています。

東側のマンホールトイレの設置場所が舗装なのは、これまでの芝生のマンホールトイレに比べて、雨天時に使いやすく、土がマンホールに落ちないという点で改善されていました。ただし、マンホールの間隔が近すぎるように見えました。

見学に参加したKさんにとって、広町みらい公園はお子さんたちと利用する大好きな公園だそうです。しかし、公園づくりの計画段階に注目していたことから、もっと良い公園になったのでは、最終的になぜこのデザインになったのかと疑問がのこっているそうです。
晴天の午後に遊びに行った親子は炎天下に日陰がなく暑くていられなかったと言います。

見学でわかった課題

公園づくりの専門家のIさんとともに、以下のような公園の問題点を確認しました。

1.案内図の前に立ち、実際に見える公園の景色と方位があっていないので理解しにくい。

2.斜面地の良さが生かされていない。

・斜面地に人工的な段差を付けてあちこちに転落防止の柵をめぐらしている。柵を乗り越えた形跡があり、かえって危険な場所にしている。
・イベント広場を見下ろす階段状観覧席は各段に転落防止の柵があり動線を分断している。柵がなければもっと自由に座れる。
・西側の階段を上がると滝流れの上部は楠の大木のある広場になっているが、造成した地面との高さを調整するために楠の根元を土で埋めている。
・北東角に台地と低地をつなぐコンクリートのスロープは、車いすが通るだけの目的なのか植栽もなく楽しい散歩道の要素がない。
・斜面にある遊具が使いにくい。

3.中央の草地は災害時の車両が入れるように地盤強化のための緑色のプラステック製の板が敷かれている。子どもが走り回っているときに滑ったり躓いたりする可能性が高い。

4.滝流れからイベント広場へとつづく水路は人工的に水を循環している。水路はイベント広場と観覧席の間の通路により分断されて両側に設置された吸水口と排水口によって水を循環している。通路を橋状にすれば水路を分断しないで済んだのではないか。
・7月29日現在は感染防止のため休止状態。

そのほか、
・全体に日陰になるあずまやが不足している。
・避難場所として利用するためには周囲に幅20mの樹林帯が必要。また、災害時にどこからでも入れるよう、周囲の柵はない方が良い。
・園内の遊歩道の色と素材に統一感がない。

子どもたちが水の循環を理解できる工夫を

広町みらい公園は新しくてキレイな公園でしたが、以上のとおり、問題もありました。特に残念なのは、せっかくの自然の地形を生かしていないことです。斜面を削り垂直の滝流れや台地、コンクリートのスロープを作るなど、重機を使った人工的な造成が目立つことでした。今後の公園づくりには、自然の地形を生かしてほしいです。

人工的な流水装置を休止している例は区内の平和の森公園、紅葉山公園、四季の森公園などあります。滝流れや水路はモーターで水を循環し、維持管理に費用が掛かるうえ休止を余儀なくするのなら作らなくても良よいのではないでしょうか。それよりも都会では雨がしみこむ地面を見る機会が少ないので、公園の緑地に降る雨を観察する体験を通して公園利用者、特に子どもたちが自然の水の循環や雨水利用を理解できる工夫をしてほしいです。(例えば、あずまやの雨どいを雨水貯留タンクにつなぎ雨水利用の見える化をする。)

計画段階で公園に関心のある市民とともに時間をかけて丁寧な合意形成がなされていたら、より魅力的な、多様な公園利用者の遊び場・居場所になると話し合いました。今後、機会あるごとに中野区へ提案・要望していきます。