「中野で実現するグリーンインフラ」(フィールドワーク編)
11月9日(土)中野区政策助成事業「中野で実現するグリーンインフラ フィールドワーク編」(NPO法人 中野・環境市民の会主催、中野・生活者ネットワーク協賛)を実施しました。
神田川流域に位置する中野区はこれまでにもたびたび台風や集中豪雨による水害を経験してきました。フィールドワークでは実際に江古田の森公園から哲学堂までの区間を江古田川と妙正寺川にそって歩き、現状のコンクリートに覆われた都市を形作っている「グレーインフラ」に変わる自然の力を生かした「グリーンインフラ」の考え方を紹介しました。
参加者は約20名、チラシやホームページ、地域の自然や樹木の観察会、江古田地域周辺で実際に水害を経験した方、大学生、そして集合場所の江古田の森公園で急きょ参加をした方と、気候変動や水害への関心の高さを感じました。
江古田川と妙正寺川にそって、雨水のゆくえを辿る
フィールドワークは、案内を須藤悦子さん(NPO 中野・環境市民の会、森の学級)が、講師を加藤がつとめました。はじめに江古田の森公園樹林広場で、須藤さんから「江古田の森公園」(旧国立療養所跡地)や公園で活動する市民グループ「森の学級」、URや積水の環境配慮の集合住宅開発の紹介がありました。中野区でももっとも緑が豊かな公園一帯の緑地の保全や創出には、市民の長年にわたる地道な活動があることがわかりました。
つづいて加藤から、①水と土壌の循環、②グレーインフラとグリーンインフラとの相違、③持続可能な都市づくりの考え方「エコトピア社会の4要素」(加藤の研究テーマ)、④コンクリートと地面での水の浸透を比較する簡単な実験、⑤中野区の洪水ハザードマップの読み方、⑦東京都23区で広く採用されている合流式下水道の仕組みを説明しました。
フィールドワークは下徳殿橋に移動して江古田川始点周辺を東京都下水道台帳で参照しつつ、雨水のゆくえを辿りました。下徳殿橋より上流部江古田川(練馬区では中新井川)は昭和中期に暗渠化、下水道に転用され、下流部はコンクリート張りの開渠の河川が残りました。
このことは下徳殿橋より上流部の下水道施設は通常雨水を雨水桝から下水道へ集めて汚水と合流して「水再生センター(下水処理施設)」へ流しますが、下水管の許容量を超える降雨(おおよそ1時間当たり3mm)時は大量の下水が江古田川へ流れ込むことを示してします。実際に江古田川河床の植物にトイレットペーパーが付着していることを確認しました。
台風19号で、プール14杯分の水が調節池に流入
次に10月の台風19号で調節池として使用し、排水後の消毒作業のため閉鎖中の旧北江古田公園を見ました。中野区によると、調節池の最大貯水量は17,000㎥、台風19号では5,000㎥(500トン)で学校プール(12×25×1.2m=360㎥)約14杯分が流入したそうです。
それから江古田川にそって江古田公園まで「古代植物」「水車」「垢離取不動尊」「整地碑」など史跡を訪ねながら進みました。江古田公園では江古田川と妙正寺川の合流点、北野神社を見てから目的地の哲学堂公園で妙正寺川第1、第2調節池まで歩きフィールドワークを終了しました。
緑化や雨水を浸透する土壌の修復で、水害の軽減を
参加者からは、都市河川の課題、治水のあり方、合流式下水道、緑地の効用について理解できた、グリーンインフラや一人ひとりにできる雨水対策などを自らの新たな課題としたいなどのコメントがありました。最後にNPO中野・環境市民の会理事長の伊東明彦さんがグリーンインフラに取り組んでいきましょうと挨拶をしてフィールドワークを終えました。グリーインフラのフィールドワークを企画した中野・環境市民の会に感謝するとともに中野・生活者ネットワークとして協賛できてよかったと思います。
今回は東京都第3建設事務所から「神田川水系の河川整備」と中野区から「中野区洪水ハザードマップ」を参加者全員分提供していただきました。
グリーンインフラは、細野かよこさんが前期区議会にいち早く取り上げた中野ネットの重要なテーマのひとつです。水害を軽減するためには、長い年月のかかる緑化や雨水を浸透する土壌の修復や雨水貯留タンクの設置を必要とします。一方、合流式下水道による河川の、そして、東京湾の汚濁を少しでも低減するためには、雨の日の洗濯や風呂水の排水をしないなど個々人にできる身近な取り組みもあります。これからも中野ネットはグリーンインフラの考え方を紹介していきたいと考えています。(加藤まさみ)