おとなも「包括的性教育」を学ぶ機会を

 重篤な副反応の発症を機に一時中断していた小学6年から高校1年女子へのヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの定期接種の積極的勧奨が2022年に復活、中野区では2023年には同年代の男子への任意接種も始まりました。これをきっかけに、中野・生活者ネットワークはまちづくり活動をしている生活クラブ運動グループ地域協議会とともにHPVワクチンや性教育について学ぶ機会を持ちました。
第1回目は、2024年3月にHPVワクチンを推進する立場の方と反対する立場の方を招いての学習会、第2回目は、11月に現役の中学校保健教諭から中学校現場の様子をお聞きしました。2回の学習会を踏まえてHPVワクチン接種前の子どもたちに包括的性教育を学ぶ機会が必要ではないかと話し合いました。そして包括的性教育を受けていない私たち大人も学ぼうと本年7月4日から輪読会を始めました。テキストは、中野ネット区議の細野さん推薦の池田賢市著『包括的性教育をはじめる前に読む本』(新泉社)です。

輪読の効用

難しい、分厚い、大切だけど関心のない分野など、なかなか手に取らない本はありませんか。輪読ならば、ひとりで手に取らない、読み進むのがつらい本でも、読んだり、聞いたり、参加者と意見を交換して興味を共有したり関心を深めたりできします。声にだすことで滑舌が良くなる・・・など、輪読にはさまざまな思いがけない効用があります。

輪読会には、中野・生活者ネットワークの会員で視覚障がいのある松田茜さんが参加しています。松田さんは日常生活では書類や図書類を音読機にかけて読んでいるそうです。輪読会ではほかの参加者の音読を聴き意見交換に参加しています。

「包括的性教育をはじめる前に読む本」の輪読会 報告1

第1回 日時:7月4日(金)10:30~12:00

於:中野・生活者ネットワーク細野かよこ事務所

 第1回は、はじめに、進行役加藤から輪読会発足の契機を説明があり、参加者(6名)が自己紹介し参加理由を発表しました。

本題 ①目次(下図)と「はじめに」を1ページずつ輪読しました。

②「性教育年表」を読みあげました。日本の「性をめぐる考え方(文化)」は、戦後(1947年~)文部省により進められた「純潔教育」の影響を受けてきたことが分かりました。

松田さんからは次のような感想をいただきました。「今まで性教育に向き合ってこなかった日本教育の課題がはっきりした。性教育と向き合うに当たって、性感染症、子供を作り生み・育てるだけではないこともはっきりした。相手を思いやる気持ちをはぐくむ、同性愛者の問題など、人権の大切さにまで及ぶ。この輪読会をきっかけに、自分の無知な部分をうめていけたらよいと思う。こうした輪読会は、参加者同士の話も聞くことができるため、自分の視野も広がるので、よいと思う。」

輪読後、今後の進め方を相談しました。開催は原則として毎月第一金曜日、中野・生活者ネットワーク細野かよこ事務所です。毎月一章ずつ1章ずつ輪読と意見交換をして記録を残していく予定です。本ホームページやいきいきレポートでも輪読会の報告をします。また、順調に進めば来年3月には読了となりますので、報告会のようなものができれば、と話し合いました。

第2回 日時:8月1日(金)10時30分~12時 

於:中野・生活者ネットワーク細野かよこ事務所

 第2回は、「序章 包括的性教育のとらえ方」を読み、『包括的性教育を学ぶ前に読む本』の大きく三つの目的と概要を確認しました。

1.「自分を定義する5つの要素」では、まず、「包括的性教育」を必要とする現状の男女の立場の違いを明らかにする。

2.「性別をめぐる問題」では「女性参画」「ジェンダーバランス」「ジェンダーバイアス」の意味を確認する。

3.「権力支配という観点」では家父長制度、男尊女卑の影響が今日でも男女の立場の違いが様ざまな社会問題になっていること、包括的性教育は性の問題だけではなくより良く生きる、偏見のない社会につながっていることを理解する

輪読後、参加者それぞれが「自分を定義する5つの要素」について考えて改めて自己紹介しました。現在の自らの姿が、生まれ育った場所・環境・時代、所属する社会、グループ、趣味などによって形作られていることがわかる興味深いディスカッションになりました。

参加者は40代から70代です。みな「包括的性教育」を受けていない(古い日本の価値観の影響を受けて育った)世代です。しかし、年齢によって折々の時代の世相(特にジェンダーについて異なる側面)を見てきたこともわかりました。

今後の予定

第3回9月5日 第1章 (荒天のため9月26日に延期)

第4回10月3日 第2章

第5回は11月7日第3章

興味のある方は途中からでも、一回だけでも結構です、ぜひご参加ください。