「ひとり暮らし・自立と介護」

オープンオフィスデイ 「介護のお話を聞く」第3回
白岩裕子さん(社会福祉法人武蔵野療園しらさぎ桜苑地域連携室室長)
日時:7月20日(土) 13:30~16:00)  於て:新井区民活動センター 第2,3,4会議室

「介護のお話を聞く」シリーズ第3回は見通すことの難しい「ひとり暮らし・自立と介護」を取り上げました。人それぞれ、異なる人生を歩み、さまざまな事情、状況のなかで老後を迎えます。家族、パートナーがいても誰にでもいつかひとり暮らしになる可能性はあり、他人事ではないテーマです。
お話は、前回に引き続き、社会福祉法人武蔵野療園しらさぎ桜苑地域連携室室長の白岩裕子さんにお願いしました。白岩さんは、1989年に「介護」に携わって以来、仕事を通して様々な形で介護の実践と介護保険制度に関わっていらっしゃいます。仕事柄、高齢者の自立や介護支援を通して「ひとり暮らし」は、白岩さんご自身でも考えを深めたいテーマとのことです。そこで、自分らしい老後の迎え方、介護が必要になる前の備えについてお話をしていただきました。4月のオープンオフィスデイ「介護のお話を聞く」シリーズ第2回では「介護が必要かな、とおもったら」 | 中野・生活者ネットワーク (seikatsusha.me)お話していただきました。
以下は白岩さんのお話の概要です。

いきいきと、自分らしく一人で暮らすって?
はじめに、私たちは生まれてから幼年期、少年期、青年期、壮年期とさまざまな経験を積んで大人になります。さらに年を重ねるにつれて、あるいは病・障がいを得て、支えが必要になります。しかし、高齢になっても、介護が必要になっても、最後まで自分らしくいきいきと暮らしたいものです。
ひとり暮らしに必要なことは大きく分けて4つあります。
1.お金・財産の管理(生活費、預貯金・投資)
2.生活能力(入浴・食事・排泄に関わることや家事全般、清潔の維持)
3.健康(医療・介護を適切に受けられる 心と体)
4.危機管理(防犯・災害時の備え、SOSの発信ができる)
ひとりで暮らすためには、4つの状況に加えて環境(どのようなところに住んでいるか…銀行・スーパー理美容院は近くにあるか、線路や危険なところはあるか、助けてくれる友人などがいるか)を理解する必要があります。

いきいき暮らすためには、生活の質(QOL・クオリティオブライフ)をどう保つかが大切です。それぞれの人生観・価値観によって、文化・教育、社会的経済的背景、ヘルスリテラシーによって形作られます。言い換えれば、いきいきとした暮らしは、心身の健康状態、生活機能ADL能力、社会適応能力、社会生活への参加度に現れます。

現在の日本の高齢者の状況(令和6年高齢者白書より)
① 健康寿命は延伸し、平均寿命と比較しても伸びが大きい。生活に制限のない期間(健康寿命)は令和元年(2018年)で男性72.68年、女性75.38年
② 65歳以上の者のいる世帯は全世帯の約半数
③ 65歳以上の一人暮らしのものが増加傾向にある
④ 65歳以上の要介護者数は増加しており、75歳以上の割合が多い
⑤ 65歳以上の介護が必要になった主な原因として男性は脳血管疾患、女性は認知症が多い
⑥ 地域内に認知症及び軽度認知症(MCI)の高齢者数と有病率が増加傾向にある
健康寿命が延び、高齢の割合が増え、高齢者の一人世帯も増えるのに伴い、認知症や持病、障がいをもち支援を必要とする人も増加傾向にあります。

ひとり暮らしケーススタディ
① Aさんは自宅で脳卒中を発症2日後に発見、一命はとりとめたものの障がいが残る
白岩さんの問い:事前に何かできたことはあったででしょうか?
参加者:知人と密に連絡をしていれば、生活用品(スマホ、ポット、トイレ)の使用状況を自動で知らせるなど緊急時の支援体制を作っておく。
② Bさんは賃貸住宅が老朽化で取り壊すため立ち退かなければならない
白岩さんの問い:こうなったらどうしましょうか?
参加者:相談先を探す:地域の民生委員、社会福祉協議会「困りごとなんでも相談」、中野区地域包括支援センター、住宅課、居住支援
③ Cさんは自営業の夫の死後、店の経営も賃貸住宅の維持も厳しく生活費にも困る
白岩さんの問い:こうなったらどうしますか?
参加者:住み替えを検討する。状況に合わせて都市型軽費老人ホーム、認知症を発症したらグループホーム、特別養護老人ホームなどを検討する
④ Dさんは若年性認知症になり、以前より仕事が出来なくなり、道順も分からなくなった。
白岩さんの説明:若い方なので、高齢者の認知症とは対応がことなります。症状が顕われたら、会社で産業医のサポートを受ける。
認知症の人が安心して歩けるように道路標示をピクトグラム(絵文字)使用やユニバーサルデザインしていく。

自分の今も将来も大切に。大切な備え
最後までいきいきと。自分らしく生きる!には
一番大切なのは、本人がどのような生活(文化・生活習慣)を大切にしたいかです。しかし、残念ながら施設を探すときには、本人が希望を言えなくなっていたり、家族の気持ちだけが優先されたりすることも多くあります。結論を余りに急いで想いが叶わないこともあります。そういう場合は、自分らしさが半減して寂しい生活にもなりかねません。

人生会議― ACP アドバンス・ケア・プランニングの勧め
白岩さんは、将来、本人が自分の意思を伝えられなくなったとしても支援する側の人が迷わないように事前のケアプランを用意する人生会議ACPを勧めています。
人生会議(ACP)とは、
「将来あなた自身が病気になったり、介護が必要になった時に備えて、これまで大切にしてきたことや、これから誰とどのように過ごしたいか、希望する医療や介護のことなどについて、家族や大切な人、医療、介護関係者とともにあらかじめ考え、繰り返し話し合うプロセスのことを言います。」
「人生会議」してみませんか|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
「わたしの思い手帳 書き込み編 ACPまずは、自分にとってなにが大切か、どうしたいのかを書き出すことから始められます。わたしの思い手帳 – 検索 画像 (bing.com)

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知っておきたい制度や仕組み
●住まいの相談:中野区住宅課 住宅政策係:住み替え相談、すまいのリフォーム相談、分譲マンション支援、空き家対策、住宅政策審議会、区営住宅、福祉住宅など
居住支援サービス – 中野区居住支援協議会 (nakano-kyojushien.jp)

住まいや施設:
サービス付き高齢者向け住宅
有料老人ホーム
養護老人ホーム:入居は区が判定
軽費老人ホーム:介護はなく見守りがあるケアハウス
認知症高齢者グループホーム:残っている力を使える少人数の住宅

●中野区社会福祉協議会:福祉、困りごとの相談を受けています、社会福祉法人 中野区社会福祉協議会 (nakanoshakyo.com)

●介護保険の情報:中野区地域支え合い推進部介護保健課 「みんなでささえる介護保険」に詳しく載っています。オープンオフィスデイ「介護のお話を聞く」シリーズ第2回をご参照ください「介護が必要かな、とおもったら」 | 中野・生活者ネットワーク (seikatsusha.me)令和6(2024)年8月1日より内容が変わります。介護保険パンフレット「みんなでささえる介護保険」 | 中野区 (tokyo-nakano.lg.jp)

●介護保険給付外の高齢者在宅サービス:「みんなでささえる介護保険」参照
日常生活を支援するために:ほほえみサービス事業、自立支援住宅改修等給付事業、おむつサービス、三療サービス(鍼、灸、マッサージ)、いきいき入浴・はつらつ事業(公衆浴場開放)、認知症高齢者等個人賠償保険

介護者のために: 高齢者緊急一時宿泊事業、家族介護教室

安否確認・安全確保:俳諧高齢者探索サービス、緊急通信システム、救急医療情報キット

権利擁護サービス:青年貢献制度に関する相談、地域福祉権利擁護事業、安心サポート事業、苦情相談、民間福祉サービス、民間福祉サービス紛争調停

●地域包括支援センター:地域包括支援センター(高齢者保健福祉サービス相談窓口) | 中野区 (tokyo-nakano.lg.jp)
介護・高齢者サービスに関するご相談は、まず、区内7か所にある最寄りの地域包括支援センターに行ってみましょう。
●健やか福祉センター:区内4か所にある障がい・難病・子育てなどの相談窓口
すこやか福祉センター窓口サービス | 中野区 (tokyo-nakano.lg.jp)
●中野区の認知症支援:認知症 | 中野区 (tokyo-nakano.lg.jp)
もの忘れ相談、認知症予防、認知症の相談、若年性認知症の相談、認知症になっても自分らしく暮らせるまち中野の実現のために、認知症検診事業なかのオレンジカフェ(認知症の方、家族、ご近所の方、専門職などどなたでも利用できるカフェ。お茶を飲みながら参加者同士の交流、情報交換できる)、

●中野区認知症地域支援推進事業(中野のなかま):ささえさんプラザ
認知症に関する相談やカフェ、テーマを決めて勉強会など各所さまざまな取り組みをしていますSKM_C450i24062714252 (tokyo-nakano.lg.jp)

●中野暮らしサポート(自立相談支援機関)の概要
生活にお困りの方は「中野くらしサポート」のご利用を | 中野区 (tokyo-nakano.lg.jp)
経済的な困りごとに合わせて、生活上のさまざまな不安や悩みを抱える方のための相談窓口。
相談窓口:中野区役所4F 受付日時:月~金 8:30~午後5時 TEL03-3228-8950
支援の内容
① 自立相談支援
② 加計改善支援
③ 住居確保給付金の支給

●生活保護生活保護の相談は生活相談窓口へ | 中野区 (tokyo-nakano.lg.jp)
生活に困窮した時は生活保護の相談をします。以下は中野区ホームページから、
「生活保護とは:日本国憲法第25条では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」として、その権利を保護する義務は国にあるあと定めています。
生活保護法では、この憲法第25条の理念にもとづき、病気や老齢、その他さまざま事情で生活にも待っている方に対して、その生活を保障し、自分の力や、他の方法でその自立を助けることを目的とする制度です。

【日本国憲法第25条】
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

【生活保護法第1条】
この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」以上

●フードパントリー:食に困ったときに利用できます。
フードパントリーは「相談支援型」と「中野つながるフードパントリー」があります。白岩さんはしらさぎ桜苑で相談支援型「さくらパントリー」を運営しています。
相談支援型フードパントリーの取り組み ~中野区内社会福祉法人等連絡会協働事業プロジェクト|東京都社会福祉協議会 (tvac.or.jp)
「中野つながるフードパントリー」 ~「食」の支援をきっかけにつながる地域へ~|東京都社会福祉協議会 (tvac.or.jp)

最後に、白岩さんからのメッセージ


●中野区には、生活、消費生活、法律、登記・境界、税務、社会保険・労務管理、暮らしの手続きと書類、行政、相続登記手続きなど、さまざまな専門相談窓口があります。
●警察署のホームページには犯罪被害者相談ほか、さまざまなトラブルの相談窓口の紹介があります。

その他、色々な相談できる人や場所があります。つながりをもち安心して楽しいシニアライフをおすごしください。
以上。
お話を伺って
いきいきと楽しく、ひとり暮らしで老後を迎えるためのヒントとアドバイスをいただきました。
中野区には困った時のさまざまな相談窓口があること、どのような「セーフティネット」が用意されているかを知ることができました。しかし困ったときに、何処の誰に相談するかは難問です。何を相談したいかをしっかり伝えないと(伝えても)相談窓口をたらいまわしにされてしまいます。まして認知機能が衰えて希望をしっかり伝えられないと、本人も支える人ももどかしく最適な解決策が得られなくなります。
白岩さんのお話から、いざという時に迷わないように、そして希望する暮らし方、支援や介護が受けられるように、人生会議ACPアドバンス・ケア・プランニングを初めようと思いました。


参加者の皆さんから様々なご意見と感想がありました。なかでもつながることの大切さについて異口同音、多くのかたから発言がありました。そしてしらさぎ桜苑でまちなかサロン(老人クラブ)「(仮称)おひとりさま」立ち上げが提案されました。今後の展開が楽しみです。  記録:加藤まさみ