避けたい「都市コモンズの悲劇」━神宮外苑再開発問題━

第5回オープン・オフィス・デイを11月19日にスマイル中野会議室で開催しました。

タイトルは「何気ない景観 実はまちの宝? 中野の魅力を再発見!」お話は十川百合子さん、建築家で「中野たてもの応援団」(20+) 中野たてもの応援団 | Facebook「平和の門を考える会」(20+) 平和の門を考える会 | Facebookの事務局をされています。

十川さんからは、たてもの応援団の活動と、平和の森公園近くにある旧「平和の門」の保存運動、神宮外苑絵画館前銀杏並木の保存運動のお話を興味深く伺いました。今後の展開が気になり小池都知事への提言」をしました。

神宮外苑再開発に対する都知事への提言

「都市コモンズ」としての外苑絵画館前銀杏並木を守ってください

絵画館前のシンメトリックに配置された銀杏並木は、外苑青山一帯に独特の個性を与えて、広く親しまれてきました。絵画館銀杏並木一帯は東京都心部の数少ない「都市コモンズ」です。コモンズ(入会地、共有地)は、もともとはイギリスの地域の人びとが生活に必要な資源の確保や放牧などでアクセス可能な土地を意味します。すなわち、コモンズとは誰もが立ち入ることができる場所であり、誰もが生きていくために享受可能であるべきものです。陽光・大気・水の循環・動植物をはぐくむ土壌もまた人が生きていくのに欠かせない(あまりにも当たり前で見落としがちな)基底のコモンズです。大規模な開発、汚染、土地の被覆、土地利用により基底のコモンズを喪失させながら都市化・巨大化を進めてきた東京にあって公園・緑地は希少な「都市コモンズ」であり、絵画館前銀杏並木一帯はその一つです。今回の複合的大規模再開発事業は、関係する企業と都市計画を変更する東京都に現状を上回る経済効果を生むと見込んでのことでしょう。はたして、大規模開発と都市コモンズの保全とどちらが後世に残す価値があるでしょうか。銀杏並木は100年の歴史があり世代を超えて愛されてきました。また公共の福祉の増進という都市計画法の目的から見ても東京都が選択すべき答えは明らかです。都市計画の決定権をもつ小池都知事に再開発事業の再考を望みます。

加藤まさみ

 

避けたい「都市コモンズの悲劇」

「都市コモンズ」という言葉について少し補足します。今回の銀杏並木周辺の複合的大規模再開発事業を聞いて、ギャレット・ハーディンの「共有地の悲劇 tragedy of the commons」 (1968 )という論文を思い出しました。

ハーディンは、共有地(コモンズ)の生態系が酪農家の過放牧により荒廃するという比喩をもとに、人類の身勝手な地球資源の利用が環境破壊を招くことを示唆しました。

ハーディンの「共有地の悲劇」は当時の人びとの環境問題への気づきとなりました。しかしその後も多くの人たちが「ほんの少しだからよいよね」と己の収益を高めるために環境を犠牲にしてきた結果が現在の温暖化・気候危機を招いてきたのです。

「共有地の悲劇」を繰り返さないためには、人口の集中する大都市の在り方を改めて、公園緑地など「都市コモンズ」の保全修復に転じることが重要です。銀杏並木の保全を顧みない企業の大規模再開発とそれを可能にする東京都の規制緩和は共有地の保全を顧みない己の収益を優先する酪農家の姿勢に似ています。

そこで神宮外苑銀杏並木を「都市コモンズ(共有地)」とよび「悲劇」を起こさないように都知事への提言をしました。加えて、神宮外苑のようには多くの人が注目しないけれども、中野区内の私たちの身近にある「都市コモンズ」を大切に保全し創造していくことを提案したいです。(加藤まさみ)

神宮外苑の未来を考える有志が発行したニュースレター