赤い柵の外側もインクルーシブな世界に!〜 豊島区のインクルーシブ公園「としまキッズパーク」見学〜

手前が「としまキッズパーク」。奥に見える芝生の部分が防災公園のイケ・サンパーク(写真は豊島ネット提供)

2020年9月にオープンした豊島区池袋のインクルーシブ公園「としまキッズパーク」を、4月26日に見学しました。

インクルーシブ公園とは

インクルーシブとは日本語で「包摂的な」、だれをも排除しないという考え方を表しています。(ユニバーサルデザインは誰もが利用できるよう設計されている、バリアフリーは障害物を取り除くことを意味し、インクルーシブとはニュアンスが異なります。)「インクルーシブ公園」は子どもたち(障がいの有無にかかわらず)誰もが一緒に楽しく遊べることを目的とする公園として最近注目を集めています。

としまキッズパークの概要

「としまキッズパーク」は、造幣局跡地の一画、防災公園イケ・サンパークに隣接する、就学前の小さな子どもたち専用の赤い垣根で囲われた1,000㎡の遊園地のような広場です。通常は予約制で開園時間は10時から16時まで、1時間の入れ替えで一回80名が利用できます。としまキッズパークの特徴と魅力は、子どもたちが楽しく過ごせるように、遊具の一つ一つから園内の隅々まで、色使いや細やかな工夫が施されていることです。

イメージカラーは「池袋レッド」〜「色」から見るキッズパーク〜

「としまキッズパーク」は、入り口を入ると施設、ミニトレイン、遊具に至るまで、ほとんどがインパクトがある「赤」。パーク前を走るIKEBUSを担当した水戸岡鋭治氏が監修し、元気を与える「池袋レッド」に統一したとのことです。さらに少しだけ、明るい「黄」が差し色として用いられています。幸せのイメージが「黄」色ということで、10台あるうちの1台だけ、「黄」色のIKEBUSが走っていて、「このバスを見ると幸せになれると、希望を持てるようにしたい」とのことです。キッズパークでも同様に「黄」を取り入れたのではないかと思いました。

キッズパーク内の色味のある色は「赤」と「黄」に絞り込み、あとは無彩色や彩度の低い色と植物の色です。すべての色の中で一番明るい色は「白」、有彩色(色味のある色)の中で一番明るい色は「黄」です。「赤」と「白」、「赤」と「黄」の組み合わせは、明度(明るさの度合い)差があるのでとても分かりやすい表示になっています。色弱で赤や緑の色相の区別がつきにくい人にとっても、明度差があれば遠くからでも読み取れます(視認性が高い)。さらに、赤や黄色はとても目立つ(誘目性が高い)色なのです。

「赤」は、色の中では一番パワフルで元気が出る色ですし、「黄」は明るく、活気や喜びを感じる色です。訪れた日は快晴で青空を背景に、新緑の「緑」と「赤」の対比が目に鮮やかで、(緊急事態宣言下で閉園中のため)子どもたちはいませんでしたが、元気にのびのび遊び回っている姿が目に浮かぶようでした。」(カラーリスト・近江さんのコメント)
*IKEBUSは豊島区のコミュニティバス

園内を走るミニSL

池袋レッドと差し色の黄色

入口に掲示されている案内

園内の案内図

さとやま(キッズマウンテン)。ミニSLでこの辺りを通ると柑橘系の爽やかな香りが

赤い柵の奥に見える黄色い建物が保健所

車椅子でも遊べる砂場、親子で乗れるすべり台

インクルーシブな遊具には、親子で使えるすべり台、ブランコ、レールバイクやキッズハウス、ミニトレイン(乗り降りが楽なドアがついている)、しゃがまなくても車いすでも遊べる砂場、花壇、畑があります。わたしたちは園内を二周するミニトレインに試乗させていただきましたが、途中で滝の音を聞き、柑橘系の花の香りに包まれ、ツタのトンネルをくぐり、と童心に戻って楽しみました。

ほかにも階段ステージ、音の出る滝、小さな「さとやま」、貸出三輪車のり場、キッズハウス、小さな図書館「ほんや」(絵本など幼児向けの図書を通してSDGsを学べるよう分類されています)などがあります。そしてゆったり使える「キッズトイレ」がありました。子育て中の参加者からは、幼児向け施設なので授乳スペースやトイレにおむつ替えする場所が欲しい、との声がありました。

担当の方のお話しでは100%インクルーシブではないとのことでしたが、来訪者がインクルーシブという考え方を理解する一助となることでしょう。そして赤い柵の外側の世界を、真のインクルーシブ(包摂的な)社会になるようにしたいと感じました。

車椅子でも、立ったままでも遊べるよう想定して作られた砂場

奥の滑り台の幅は通常よりも広くなっていて、親子が一緒に利用できる作りになっています

木で作られた滝からは、優しい水の音が聞こえていました

 

小さな図書館「ほんや」

自転車を漕いで発電。写真では見にくいですが、電球が点灯しています

キッズトイレ。おむつ替えのスペースがないのが残念

IKE・SUN PARK「自治体SDGsモデル事業第1号」

キッズパーク見学後は、まちづくりに関わっている中島明さん(豊島・生活者ネットワーク運営委員)から隣接するIKE・SUN PARKイケ・サンパークについて伺いました。防災公園として防災備蓄倉庫を備えており、広々とした芝生は災害時に物資を搬入するスペースとなります。またイケ・サンパークは、「としまSDGs都市宣言」をしている豊島区の「自治体SDGsモデル事業第一弾」として、週末のファーマーズマーケットを開催しています。公園内にはおしゃれなカフェの他4台の可動式の屋台が設置されていて、新しく起業する人たちに期限付きで貸し出されています。また、公園内には豊島区のコミュニティバスIKEBUSの停留所があります。

中野区同様公園面積が少ない豊島区のまちづくり

イケ・サンパークの他にも、豊島区役所屋上庭園「豊島の森」、地下に東電の変電所と自転車駐輪場がある南池袋公園(園内は緊急事態宣言を受けて閉鎖中の中央芝生広場を囲んで大勢の人が利用していました)を見学しました。どちらもユニークで魅力的な公園でした。

池袋は山手線に接する一大拠点、池袋駅南口一帯は区役所を含む大規模な再開発が進んでいます。もともと人口密度、1人当たりの公園面積が日本一狭い豊島区(2位は中野区)では、URや東電など事業者の協力を得て新たな公園整備をしています。としまキッズパークを含む保健所(イケ・サンパークと反対側)の土地は、近隣の木密地域解消のためのURのまちづくりの種地で、5年間の期限付きで(保健所が区役所周辺の建設予定地に移転するまで)借り受けているそうです。

イケ・サンパークや豊島区役所周辺は、中野駅周辺まちづくりを上回る数の超高層ビルが並び縦型スプロールが進んでいます。人口過密な豊島区と中野区で公園を手に入れるためには再開発、超高層ビル建設と引き換えという方法しかないのでしょうか? 超高層ビルが建てばますます人口密度が高まり、一人当たりの公園面積は狭くなりかねません。見学した公園の魅力とは別に、SDGs(持続可能な開発)を取り入れたまちづくりでも環境負荷は高まるのではないかと気になりました。

今回の見学は、豊島・生活者ネットワークの前区議会議員村上典子さんにアレンジしていただき、豊島区の公園、土木担当の皆さんにご案内いただきました。コロナ感染拡大の緊急事態宣言下で、人数制限があり希望者全員とご一緒できなかったことが残念でした。

 

*参考

ノーマライゼーションとインクルーシブの違いとは?日本のインクルーシブ教育の課題 | 障害者と企業をつなぐ就労支援・障害者雇用のTRYZEメディア

「としまキッズパーク」9月26日(土)にオープン!|豊島区公式ホームページ (toshima.lg.jp)

IKE・SUNPARK/イケ・サンパーク – 東池袋から、公園を通じて文化をつくる (ikesunpark.jp)

10階 屋上庭園「豊島の森」|豊島区公式ホームページ (toshima.lg.jp)

南池袋公園160715_minamiikebukuropark_1.pdf (toshima.lg.jp)