みんなにわかりやすい色づかい〜カラーユニバーサルデザイン〜

2月6日の「『色』でストレス解消しましょう!」が好評だった、カラーリスト・近江真理さんによる「色」についての寄稿パート2。今回のテーマは、「カラーユニバーサルデザイン」です。

見分けにくい色は人によって異なる

暮らしの中に、さまざまなユニバーサルデザイン(UD)マークがありますが、カラーユニバーサルデザイン(CUD)マークを見かけたことはありますか?
カラーユニバーサルデザインとは、色の見え方が一般と異なる人にも情報がきちんと伝わるよう、色づかいに配慮したユニバーサルデザインを指します。つまり、みんなに分りやすい色づかいのことを指すのですが、「見分けやすい色」は人によって異なります。
あまり知られていませんが、色の感じ方(色覚)は、味覚や嗅覚と同じように人によって異なります。遺伝や加齢疾病や事故等が原因で「見分けにくい色」はそれぞれ違っているのです。これを「色覚の多様性」といい、実は誰も自分以外の人がどのように色を感じているのか分からないのです。

カラーユニバーサルデザイン(CUD)のマーク

いろいろな色の見え方

色の感じ方(色覚)は遺伝子によって決まります。従来の色覚検査によって分類すると一番多い色覚タイプは「一般色覚」となり、次に割合が多い色覚タイプが、赤緑の「色弱者」、そして青黄の「色弱者」です。これらの色弱の人は、視力には問題がなく、細かいものまで十分に見えますが、一部の色の組合せについて一般的な色覚者と感じ方が異なるのです。

先天性の色弱者は、日本では男性の20人に1人、女性では500人に1人の割合で、日本人全体では約320万人いるといわれています。例えば400人規模の学校で男女同数と仮定すると、10人くらいの色弱のこどもがいることになります。

色弱者であることは、第三者からは分かりません。その特性を隠しておきたいと思う人も少なからずいて、もし色弱者の見分けにくい配色が、製品や施設に使われていて、色の見分けにくさの不便を感じることがあったとしても、それをクレームとして指摘するのではなく、自分にも見分けられるふりをしたり、不便を我慢したりする傾向があるのです。

左・一般色覚者の見え方 右・色弱者の見え方

左・一般色覚者の見え方、右・色弱者の見え方

 

「一般色覚」の人も加齢に伴い、眼の老化や病気(白内障や疾患)によって色の感じ方が変化し、色で不自由している人は多数います。例えば白内障患者の場合はクリーム色のフィルター越しに見ているようになり、弱視者の場合は、コントラスト配色の配慮が必要になります。

*見え方には個人差があります

分かりやすい色づかいでしょうか

印刷物や看板、電子機器類、施設や建物の案内図など様々な物に色が付けられています。色は見た人に感情効果をもたらし、情報を整理や分類し、強調したり、分かりやすくしてくれます。一方で、色を使うことが増えてくるにつれて、見分けにくい色づかいを感じる人も増えています。

色弱者にとっての障がい(バリア)は、一般色覚者だけを念頭において色分けされた情報です。そのバリアを作らない色づかいをすれば良いのですが、その際、色弱者用・一般色覚者用の情報提供をしても解決になりません。CUDは決して「一部の色弱者のためだけの特殊なデザインで、一般の人には見にくいもの」ではないのです。伝えたい内容を整理し、多様な色覚での見え方を意識したデザインは、誰にとっても見分けやすく、公平に情報を共有できるようになります。

カラーユニバーサルデザインの3つのポイント

●できるだけ多くの人が見分けやすい配色を選ぶ

〇彩度の高い色と低い色、明度は明るい色と暗い色を組み合わせる
〇背景の色と文字の色に明暗の差をつける

●色を見分けにくい人にも情報が伝わるようにする

〇形を変えたりマークを併用したり、文字の縁取りをつけたりすると伝わりやすくなる
〇地図やグラフなどは斜線やドットなどの模様をつけたりする
〇文字や線を太くする

●色の名前を用いたコミュニケーションを可能にする

〇色の名前を入れると伝わりやすくなる

私たちが身近に利用する公共施設、交通機関などでは、近年CUDの取り組みが推進され、案内板の文字やサインが大きくなったり、見やすい色づかいがされるようになってきています。情報源としての視覚情報の占める割合はとても大きく、身近にある「色づかい」がすべての人に分りやすいものになっているのか、少し意識して見ていただければと思います。

東京メトロのカラー変更(2015〜16年に少し見分けやすく変わっています)

見分けやすい事例

*ユニバーサルデザインとは、年齢、性別、個人の属性や考え方、行動の特性等にかかわらず、全ての人が利用しやすいようあらかじめ考慮して都市及び生活環境を設計することです。(中野区公式サイトより)