基調講演Ⅰ「低炭素社会の実現に向けた産業界の取り組み」 東京電力KK取締役会長 勝俣恒久
近年日本のCO2排出量は業務・家庭部門が増加(約+40%)、運輸・エネルギー部門(約+15%)がこれに次ぎ、この結果京都議定書目標に対し日本のCO2排出量は大幅増となった。
一方経団連加盟の多くの企業はCO2排出量削減に努力し製造業の使用エネルギーは世界一少なくなった。ただし電気事業者については柏崎原子力発電の長期稼働停止によりCO2排出量が大幅増となった。なお今後技術的裏付けのない排出権取引は国民に膨大な費用負担がかかると警告している
基調講演Ⅱ「グローバル時代、日本の課題は」 政策研究大学院大学教授/前内閣特別顧問 黒川 清
最近の環境問題は世界でトップクラスの日本の環境技術で解決でき、また解決しなければならない。これから日本で注目すべきは農業分野と森林分野で再生可能なエネルギー資源化を促進し、食料や資源面で日本が自給可能になる様にするとともに技術開発により産業構造を改革すべきである。
環境討論「できるか、日本発CO2−50%のエコライフ」〜低炭素革命に向けて
Ⅰ.コ−ディネーター Japan for Sustainability共同代表/e’s代表 枝廣淳子
世界各国は日本も含め2050年のCO2排出量削減目標を1990年比80%削減とする方向である。CO2排出量削減のためには省エネと代エネ、森林によるCO2吸収量増加、環境技術革新、仕組み作りが重要である。
Ⅱ.パネリスト 帝人KK取締役会長 長嶋徹
帝人の新エネルギーやCO2排出量削減関連製品は、軽量化航空機・自動車、風力発電設備、リサイクルポリエステル。新たな開発対象はポリカーボネート、バイオメタノール、化学原料海藻の実用化、レアメタルのリサイクル化。なお金融危機後安定するまでの数年間に環境技術のイノベイションを図り、世界でリーダーシップをとるチャンスとしたい。
Ⅲ.パネリスト イオンKK執行役グループ環境最高責任者 土谷美津子
イオンは「温暖化防止宣言」をしてCO2排出量の目標を定め挑戦している。レジ袋の有料化など企業として温暖化防止に早くから取り組んでいるが、国としてシステムを導入すべきである。金融危機は消費行動の変化をもたらし今後の需要への影響が大きい。
Ⅳ.パネリスト 首都大学東京都市教養学部都市政策コース教授 奥真美
日本は環境意識が高いがドイツは環境行動が優先している。欧州のCO2排出量削減目標は高いが、コスト負担の仕組みについて説得力ある説明がなされ反対意見は出ない。なお環境問題の解決には都市自治体の果たす役割は重要で都市レベルでの率先行動が必要である。
後 記
1990年京都議定書で各国に課されたCO2排出量削減目標は現状では非常に厳しいものとなっている。日本はそれまでにかなりの成果を挙げていたのでより厳しい目標数値となった。しかし講演者やパネリストはそれには触れず欧米のその後改定したより高い目標数値に注目していた。昨今の経済危機対策とCO2排出量削減は矛盾する問題であるが、今後いかに知恵を出し当初の目標を達成するかが先進国・発展途上国の指導者に問われている。
なお12月11日〜13日記念シンポジュウムの別の会場で環境展示会が行われた。会場はビッグサイト東1〜6ホールの広大な面積を占め、関心のある多くの諸法人・企業・大学・研究機関などが短時間では見廻れないほどの展示やイベントを出し、また大変な盛況(3日間の総来場者数173,917人)で学童も含め多くの人達の環境に対する関心の深さが印象に残った。 下 瀬 健 雄